トヨタのハイブリッド車を見てみると、搭載されているバッテリーがリチウムイオン電池のものとニッケル水素のものがあります。例えばクラウンを見てみますと 2.5L モデルには従来通りニッケル水素電池、3.5L モデルにはリチウムイオン電池が搭載されています。搭載バッテリーが変わると何が変わるでしょうか?
搭載バッテリーが変わると?
諸元表から見る
2.5L モデル | 3.5L モデル | |
---|---|---|
種類 | ニッケル水素 | リチウムイオン |
容量 | 6.5Ah | 3.6Ah |
あれ?リチウムイオン電池の方が容量がめちゃくちゃ少ない!?高価だからケチったのか?とか思ったりしますよね…
ニッケル水素とリチウムイオンの違い
実はニッケル水素とリチウムイオンでは特性に差があって得意不得意があります。
ニッケル水素 | リチウムイオン | |
---|---|---|
サイズ | 重く大きい | 軽く小さい |
動作温度 | 低温に強い | 低温に弱い |
充放電時間 | 遅い | 早い |
価格 | 安い | 高い |
つまりニッケル水素は安く低温に強いため、雪国で使われる想定の 4WD 車や低価格なコンパクトカーなどに採用されます。逆にリチウムイオン電池は充放電時間が速くコンパクトなため、高性能な車両に採用されます。充放電時間が速いということは、電気自動車やプラグインハイブリッド車などに採用すれば充電時間が短縮できます。また回生ブレーキも大きくすることが出来ます。
またリチウムイオン電池は軽くて小さいので、ニッケル水素と同じ大きさで比較すると並列にすると電池容量をより増やすことが出来ます。一方で直列にするとより電圧を上げることが出来るので、モーター出力を大きくすることが出来ます。
クラウンの場合
一般的な諸元表には載っていませんが、論文などを拝見すると以下の仕様になっています。
ニッケル水素 | リチウムイオン | |
---|---|---|
容量 | 6.5Ah | 3.6Ah |
接続方法 | 直列 | 直列 |
個数 | 192セル (32モジュール) | 84セル |
電圧 | 1.2V / セル 230.4V | 3.7V / セル 310.8V |
容量 | 1.5kWh | 1.12kWh |
この表を見比べてみるとリチウムイオンの方が電圧が高いためモーターの出力を上げることが出来ます。現にクラウン 3.5L モデルの方がモーター出力が高いのはこの電圧差によるものが大きいと考えます。一方で電圧を考慮しても容量は 1.5kWh / 1.12kWh となり、ややリチウムイオンの方が少なくなっています。実はリチウムイオンの容量を減らしてもいいから車両重量を減らしたかったのかもしれませんね。2t 近いので…(それか入らなかったか)
まとめ
2.5L モデルがニッケル水素なのは、おそらくクラウンという車種を鑑みて雪国に使われたり政治家に使われたりと、様々な扱われ方を考えてのことかもしれません。低温時に不安定となるリチウムイオンよりはニッケル水素の方がいいのかも?
一方で 3.5L モデルがリチウムイオンなのは、マルチステージハイブリッドというブランドのために高出力を求めた結果かと思います。そのため歴代最高出力を手に入れています。
どの車種にどのバッテリーを使うのかですが、ハイブリッド車では基本的にニッケル水素を使用。PHV や EV など充電時間を気にしたり、高出力が必要なモデルにはリチウムイオン電池を使用するという方針かと思います。
ちなみに初代ヤリスではコンパクトカーでありながらリチウムイオン電池を使用していますが、旧モデル Vitz の出力が競合のホンダ・Fit やニッサン・ノートと比べて低かったため、高出力化するために採用したようです。