今までの自動車盗難はリレーアタックが一般的でしたが、2020年頃から新しく「CANインベーダー」という手法が目立ってきました。もはや電波遮断ポーチなどに車の鍵を入れているだけでは困難な時代になりましたね…
予備知識として、車の命令の仕組み
今の自動車はコンピューターの塊
CANインベーダーの仕組みを知る前に車がどうやってエンジンを掛けているかの仕組みから簡単に説明します。
自動車はエンジン、ブレーキ、ドアロックなど全て別々のコンピューター(ECU、電子制御ユニット)で制御しています。車種にもよりますが、20〜30個ほどのECUが搭載されています。最近では自動ブレーキなどのECUも増えてきていますね。
さて、そこまでECUが多くなると全てに接続するケーブルの数が大変なことになります。例えばECUが5つあるだけでそれぞれ接続するとなると10本のケーブルが必要になります…ECU6個だと15本、7個だと21本…これはヤバイ…
というワケで今の自動車はECUやセンサー間は1本のケーブルにして、全ての命令をこのケーブルに流すという仕組みになっています。
ECU間、センサー間の通信について
さて、1つのケーブルで様々な通信が行き交うことになるので問題が起きます。それはこの通信が何か分からなくなること。
そのため、ECUやセンサーの通信にはCAN通信という規格に沿って行われています。また最近では家庭用PCでお馴染みの有線LANと同じEthernet規格で通信している車もありますが、通信速度が速くなるものの、やってることは変わりありません。
CANインベーダーとは
さてここから本題で、CANインベーダーについてです。勘がいい方はお分かりかと思いますがCAN通信に侵入して色々することです。
上に説明したとおり、CAN通信用のケーブルは1本で全てのECUやセンサーが繋がっているので、このケーブルに対してドアロック命令を流すだけで解錠できてしまいます。
先日捕まった犯人はフロントバンパーを外していたみたいなので、ヘッドライトのCAN通信のケーブルから侵入したと思われます。そう、ヘッドライトの点灯も今の時代ECUで行ってるんです。
ちなみにEthernet通信を行う車ではこの仕組みは使えないものの、通信規格が違うだけなので同じようなEthernetインベーダーみたいなものが出てくるのも時間の問題です。
守る方法はあるか?
もちろんあります。
1つは物理的な防止方法です。タイヤロックやハンドルロックなどを装着することで、犯人に面倒くさがられて帰っていただく。という方法です。とはいえカッターなどで切られてしまうこともあるので、あくまで時間稼ぎや心理的な攻撃という感じです。
もう一つはダブルイモビライザーを付けるという方法です。イモビライザーとはキーと照合して一致しなければエンジン始動できなくなるものです。CAN通信経由でドアロックは解錠されてしまいますが、ダブルイモビライザーによりエンジン始動することが出来なくなります。ただしCAN通信連動だとまったく意味がなくなるので、メーカー純正とは独立したイモビライザーを付けることが重要です。メーカー純正のイモビライザーは突破できても、追加で装着されたイモビライザーが守ってくれるという形ですね。
あとはもう運ですが、犯人に目星を付けられないようにすることですかね…人通りの多いところや防犯カメラがあるところに停めるだったり、珍しい車には乗らないなど。まぁ自分が好きな車がそれだったら仕方ないですよね…
車両の盗難はもはやいたちごっこです。正しい知識を持って愛車を守っていきたいですね。