マルチステージハイブリッドの仕組み

THS-II との違い

THS-IIの概略図

これが THS-II の概略図でしたね。エンジンはプラネタリーギアを通してジェネレーターとタイヤに直結し、モーターはリダクションギアを通してタイヤに直結されています。

マルチステージハイブリッドの概略図

一方マルチステージハイブリッドはこの通りです。モーター直後にあったリダクションギアがエンジンの出力と混合した後に移動し、ギア数も4速になっています。

メリット

前章(THS-IIの動き)でも解説しましたが、エンジンの最大出力を出すにはタイヤ側をできるだけ軽くする必要があり、そのためには車速を上げて120km/h以上にする必要がありました。

THS-IIのボトルネック

ということはこの部分に変速機を入れてトルクを変化させることで120km/h以下でもエンジンのトルクをタイヤに伝えることができることになります。マルチステージハイブリッドになることで低速時(例えばサーキットでのコーナー立ち上がりや高速道路合流時の加速など)でもエンジンの最大出力が出せるようになるため、ストレスフリーな走りを体験できます。

マルチステージハイブリッドの車速域
マルチステージハイブリッドの車速域(出典: トヨタ自動車)

マルチステージハイブリッドによってエンジンの最大出力を出せる車速が60km/h以上になったほか、エンジンの回転数を上げることもできます。エンジンの能力を引き出しやすくなったのでエンジンの出力を上げてもタイヤに伝わるようになったことが大きな要因ですね。

デメリット

今までリダクションギア2段だったのが4段に変わることで、プラネタリーギアに入る入力が複雑になります。そのためATオイルによる制御が多くなるため製造コストが上がったり、重くなったりします。

低速でもエンジンの最大出力が直接必要になるのは一般的にエンジン出力がかなり大きいものになります。通常の THS-II で最大能力が出ない条件がタイヤに流れるトルクがあふれる必要があるためです。小さい出力のエンジンだとトルクが溢れにくくなります。

そのため一番メリットの大きい3.5Lエンジンクラスからの導入となっていますが、今後は採用範囲が広がってくるかもしれません(2.5Lクラスなど)。一方1.5Lクラスなどではコストも考慮して採用されないかもしれませんね。