4輪自動車にはメジャーなもので直列3気筒、4気筒、6気筒エンジン。さらにはV型6気筒、8気筒、12気筒エンジンなどがあります。3気筒エンジンは振動が多い!やっぱ直列6気筒は滑らかだよね。などいろいろあると思いますが、具体的にどのエンジンがどんな振動を起こすのか解説してみたいと思います。
手っ取り早く結論
前提知識
結論の前に前提知識として紹介しておきます(これだけ分かっておけばOK)
エンジン振動の種類(周波数)
エンジンには絶えずいろいろな振動が発生しています。エンジンは一般的にピストンを上下運動させながら回転させていますが、ピストンの上下運動に合わせて発生する振動を1次振動と呼びます。またピストンの上下運動に対して2倍の速さで振動するものを2次振動と呼びます。このように3次振動、4次振動と増えていきますが速さが速くなるほど細かい振動となるので体感しにくくなります。一般的に感じるのは1次振動、2次振動あたりとなります。
それを踏まえて結論表
直列3気筒 | 直列4気筒 | 直列6気筒 | V型6気筒 | |
---|---|---|---|---|
トルク変動 | 1.5次 | 2次 | 3次 | 3次 |
1次振動 | 小さい | 小さい | 小さい | 小さい |
2次振動 | 小さい | 大きい | 小さい | 小さい |
1次偶力振動 | あり | なし | なし | あり |
それぞれの振動がどういうことなのかは下の方で解説するとして、気になる振動を強調させてみました。
すべてのエンジンがトルク変動による振動を発生させますが、表を見る限り最もエンジン振動が少ないのは直列6気筒エンジンとなり、非常に滑らかといわれるのはこのためです。とはいえ今はトルク変動を除き、カウンターシャフトやバランスウェイトなどを用いることでかなり解消できていますので、V型6気筒エンジンも負けじと振動が少ないエンジンです。
詳しく解説
少し難しい話になるかもしれませんが、お付き合いください。
トルク変動による振動
4ストロークエンジンでは4回の上下運動(クランクシャフトが720°回転)ごとに1回の爆発を行います。爆発してからピストンが下がるときはトルクが発生しますが、それ以降の排気、吸気、圧縮の過程は惰性で回るしかありません。つまり、単気筒エンジンだと押し出す力が不連続となりこれが振動となって伝わります。エンジンが発生するトルクが不連続となる振動なので厳密にいえばエンジンの振動ではないんですが、一番体感できる振動だと思います。
4ストロークエンジンである以上、トルク変動が無くなる(感じにくくなる)のは理論上5気筒エンジン以上となります。(1つのピストンが爆発で下がっている最中に他のピストンで爆発が起きる)
この振動は低回転時に発生するため、アイドリング時や一般道を定速走行しているときに感じやすくなります。特に最近のガソリンエンジンは高効率を求めているために、細かい振動が足元から伝わってくる車もあるかと思います。高速道路など高回転時にはあまり感じられません。
1次振動
1次振動とはピストンが上下するときの振動です。3気筒エンジンは1つのピストンが上がっているときに、ほかの2つは0.5ずつ下がることでつり合い、振動をキャンセルできます。4気筒エンジンや6気筒エンジンは2気筒ごとに上下することでつり合います。つまり一般的なマルチシリンダーなエンジンだと1次振動は少なくなります。
2次振動
2次振動とはピストンが上下する速さの2倍の振動が発生することから呼ばれています。ピストンが上に動く速度と下に動く速度が少し異なるため、釣り合わずに振動として現れてきます。3気筒、6気筒エンジンではピストンが上下にいるとき、ほかのどれかのピストンは動いているため2次振動は小さくなります。一方で4気筒エンジンはすべてのピストンが止まっているタイミングがあるため、2次振動が大きくなります。
規則正しい振動なのでバランスシャフトを入れることで2次振動を抑制することが出来ます。
1次偶力振動
偶力振動とはシリンダーが奇数の場合に発生するもので、エンジンを横から見たときにピストンが左右対称に動かないため回転するような振動を発生するものです。直列3気筒エンジンや、それを2つ組み合わせたようなV型6気筒エンジンで発生します。
規則正しい振動なのでバランスウェイトを入れることで1次偶力振動を抑制することが出来ます。
まとめ
実はエンジン自体の振動はたくさんあるものの、ほとんどがバランスシャフトやバランスウェイトなどで抑制することが出来ます。そのほかの様々な振動はエンジンマウントで吸収しています。
直列3気筒 | 直列4気筒 | 直列6気筒 | V型6気筒 | |
---|---|---|---|---|
トルク変動 | 1.5次 | 2次 | 3次 | 3次 |
1次振動 | 小さい | 小さい | 小さい | 小さい |
2次振動 | 小さい | 抑制 | 小さい | 小さい |
1次偶力振動 | 抑制 | なし | なし | 抑制 |
エンジン自体の振動ではないトルク変動はどうすることもできないため、3気筒エンジンや4気筒エンジンではどうしても残るかと思います。また3気筒エンジンの方がトルク変動は大きめです。振動に敏感な方は6気筒エンジン以上か、電気自動車に乗った方がよさそうです。
トルク変動の振動はアイドリング時に目立ってくるので、アイドリングストップだったりハイブリッド車だと問題なかったりします。ただ自分の乗ってる4気筒エンジンのハイブリッド車でも、一般道を走ってると細かい振動が伝わってくるので人それぞれかもしれませんね。